談話室(ティータイム

「神」に出会い、伝道の旅へ

月から戻った飛行士

米国コロラド州のロッジで5年前の夏、61歳の男が心臓麻痺で倒れ、息を引き取った。アポロ15号の飛行士、ジェームズ・アーウィンだった。月に降り立った12人の中で初の故人となった。

妻のメアリー(57)やNASAの同僚の話から、当時の彼の様子が蘇る。月の大地は、灰色の山脈と丘が連なっていた。地平線の向こうに黒い宇宙空間が見えた。

動くものはない。風もない。だが、まるで生まれ故郷にいるような安心感があった。すぐ後ろに「神」がいる感じがして、何度も振り返った。

アーウィンは貧しい家庭から空軍に入った。高く飛ぶことがそのまま人生の成功とつながってきた。25年前の夏、高さの極みの発射台に向かったが、心は晴れなかった。

彼もまた、すれ違いが続く妻と、顔を合わせるたびに口論になった。すべてを投げ出して一市民に戻ることも何度か考えた。月飛行は、名声を追い求めてきた自分と向き合う旅だったのかもしれない。

「人が月面を歩いたことより、キリストが地上に降り立ったことのほうがはるかに重要だ。それを知らせるために、神はわたしを月に導いたのだ」。それが地球に帰還した彼の結論だった。戻るとすぐ、自宅のあるコロラド州に宗教財団を設立し、「神の偉大さ」を語る旅に出た。

アーウィンの姿が、その後、トルコのアララテ山で何度も見かけられた。この山に着いたというノアの箱舟を捜しに来たのだ。足を滑らせて大怪我をしてもめげなかった。箱舟捜しは6度に及んだが、徒労に終わった。「何10年に一度、山頂の深い雪の溶ける時がチャンスなんだが」と残念がった。

晩年、彼は持病の心臓の衰弱がひどくなった。医師から数年の命と宣告された。それを家族に隠して、年に40週も伝道に出かけた。

最後の日

正午近くのコロラドは、真夏の青空が広がっていた。倒れた彼は友人に抱え上げられたが、発作用の薬に触れようとせず、遠のく意識の中で言った、「祈ってくれ・・・・・」。

アーリントン墓地で営まれたアーウィンの葬儀に、アルフレッド・ウォーデン(65)の姿があった。アーウィンが月面で「神」を感じている時、アポロ15号の指令船で月を周回していた。

たった一人で月を回りながら、ウォーデンも「神」を感じて、同じ気持ちに浸っていた。それは25年を経た今も忘れられない。

「宇宙にはすべてを超えた『力』がある。初めも終わりもない。このすばらしい世界を造られた『神』がおられるのだ」。

(199615日 朝日新聞記事より)

出典:日本福音書房「恵みのことば」第5 ”月から戻った飛行士”より抜粋

        
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